日本各地の民話は、人々が長年に渡って伝承してきた、生々しくも深い知恵の宝庫です。そこには、現代を生きる私たちにこそ必要なメッセージが豊富に含まれています。
今回は、テレビ放映版『まんが日本むかしばなし』の原作として復刊の待望の久しかった、新コンテンツ『日本の民話』シリーズ(未來社)と、オンデマンド版のロングセラーとして好評の『ふるさとの民話』シリーズ(偕成社)の2シリーズを紹介いたします。
この機会にぜひ、各地の民話のもつ豊かな世界をご堪能ください。
一人の美しい働き者の娘が、ある祭りの晩に山をいくつも越した村の若者と知りあって互いに惹かれあった。しかし、祭りが終わると会うこともなくなってしまった。毎日のように山をみつめて恋い焦がれる娘は「山を越えて会いにいこう、その夜のうちに戻っていれば誰にも知られまい」と山道を走って会いにいくようになった。若者の家の戸をたたくその手には、必ずつきたての餅が握られていた。だが、そのうち若者は毎晩のようにけわしい山を越えてくる娘を魔性のものではないかと恐れはじめ、いとわしく思うようになってしまう。「家を出るとき、餅米を一握りずつ握りしめて出ると、いつの間にか餅になっているのです。どうかそんな疑いは持たないで……」泣きながら娘は訴えたが、とうとう若者は娘を殺そうと決心してしまう。山道で待ち伏せし、深さもしれない谷底へ突き落とした。あわれな娘の血がしたたったのか、やがて、そのあたりには真っ赤なつつじの花が咲き乱れるようになったという。(要約)
「掌に握りしめて走った米が餅になった」というこのひとことで、女の愛情の深さ、激しさを象徴的に語る。この「象徴的に語る」という点が私にとっての民話の魅力のひとつですね。ときにはユーモラスに、たとえば現代でも子どもたちに人気の高い「屁っこき姉さ」の話もそうですが、ここでは「ぼがーん」という屁の音が、それまでに耐えに耐えていた姉さのエネルギーの大きさを表しています。象徴的なできごとがすべてを語り尽くす、というのはやっぱり民話だからこそのものだと思いますね。
(松谷みよ子氏インタビューより抜粋。「未来」06年8月号「民話を語り継ぐということ」)
*松谷みよ子さんおすすめの話
「おしになった娘」「黒姫物語」「つつじの乙女」(日本の民話1『信濃の民話』)→リンク
『日本の民話』全79冊
判型:A5ソフトカバー
1957年の第一巻刊行から今年で50年。根強い民話ファンの方々に支えられながらも品切れになってしまった巻が多く、これまでご要望にお応えできずにいた「日本の民話」シリーズを、新装・オンデマンド版として復刊いたしました。
北は青森から南は沖縄まで、各巻の編者によって直接採集された、各地で語り継がれる民話の集大成です。民話には各地の風土が色濃く反映されています。各地方の特色や、少しずつ形を変えて全国各地に点在する同じ話を読み比べてみるのも楽しい本シリーズは、長年テレビ放映されていた「まんが日本むかしばなし」の原作でもあります。
読み聞かせや語りのおもしろさが注目されている昨今。ぜひ、「民話の世界」をお子さんやお孫さんとご一緒にお楽しみください。
1.偕成社の「県別・ふるさとの民話」につきましては、「万能書店」でのお取り扱いがございません。誠にお手数ですが、ご購入につきましては最寄りの書店にお問い合わせください。
2.未來社の「日本の民話」につきましては、「書籍一覧へ」を押した後、気になった商品がありましたら、商品のタイトルまたは表紙画像を押してください。
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